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18禁小説『裏闘技場の無様恥辱ショー』

 1、2と公開していた紗々主人公の話1話目の完成版です!
 シリーズタイトルは『絆紗々の裏稼業』になりました。
 ヒロピン、リョナ、無様エロ路線です。

※紗々と人留の再会を三年前から一年前に修正しました。あと、エロシーンの語尾に記号を追加。


『裏闘技場の無様恥辱ショー』

 撮影スタジオでライトの光を浴びながら、絆紗々は凛とした笑みを浮かべていた。
 革製のソファで長い脚を組み、たまに小首を傾げるとボブカットの黒髪がサラリと揺れる。
 男と変わらぬ長身、Hカップの豊満なバストと肉付きの良い尻と太もも。黒いノースリーブのセーターと白いジーパンという体にフィットする衣服のため、三十路の熟れた肉体がしっかりと目立っていた。
「絆先生が推理作家を志したきっかけを教えていただけますか?」
 テーブルを挟んで座った雑誌記者の男が問い掛けると、紗々は唇を指でなぞった。
「昔から小説を書くのが好きだったんですが、その頃は趣味止まりだったんです。でもある人に読んでもらったことでプロを目指すようになりました。彼に、もう一度読んでもらいたくて」
「その方は『我が愛しの名探偵』ですか?」
「ええ」
 紗々は過去を懐かしむように切れ長の目を細めた。
 昨年、推理作家としてデビューした紗々の処女作の献辞『我が愛しの名探偵に捧ぐ』は、ファンの間でちょっとした話題となっている。
 二作目に著者近影を載せたところ売り上げが倍になったなどという噂が実しやかに語られているが、実際に彼女に会った者であれば信じてしまうことだろう。
 それほどに絆紗々という女はチャーミングであった。
 そんな紗々の『愛しの名探偵』という存在に下卑た興味を抱く者は少なくない。
 雑誌、小説夏川の巻頭記事用のインタビュー記者も、やはりそこは外すことができないようである。
「どんな方なんでしょうか?」
「素敵な人ですよ。強くて優しくて、地道な調査を得意とする、それでいて武闘派の名探偵……」
 惚気のような言葉を並べる彼女の頬が赤らんでいるのは、ライトの熱気のせいか否か。
 紗々はテーブルに置かれたミネラルウォーターで喉を湿らせると、少し困ったように微笑んだ。

 インタビューが終わると、紗々はソファの背もたれに背中を預け息をついた。
「お疲れ様でした、先生」
 ブラウンのスーツに銀縁の眼鏡が似合う青年が、そんな紗々に歩み寄る。
 彼は首縄尋夫。二十代半ばとまだ若いが優秀な編集者だ。
「ああ、うん。最近インタビューみたいな仕事が増えたなあ。誰かさんのおかげでね」
 紗々に著者近影を載せることを提案したのは、この敏腕編集者だ。
 そこから夏川出版は雑誌の巻頭特集などに紗々のインタビュー記事──というより写真を使うようになったのである。
 実際にそれで売り上げを伸ばしたのだから、首縄は確かに優秀なビジネスマンであると言えるだろう。
「ご不満ですか?」
「いや、写真数枚で読者が増えるのなら安いものだよ」
「写真はただの広告、先生の小説自体に魅力があるのは僕が保証します」
「ありがとう。まあ、インタビューはまだ慣れないんだけどね、緊張しちゃって」
「堂々としていらっしゃいましたが。緊張しているようには見えませんでした」
「それなら良かった」
 紗々は苦笑し、頬を掻いた。
「ところで、先生の愛しの名探偵はお忙しいのでしょうか?」
「忙しいよ。今日は浮気調査、昨日はペットの猫探し」
「はあ」
 とても名探偵とは言えないような仕事のラインナップに、首縄は気の抜けた声を上げる。
「そういう依頼をきちんとこなすから、人留君は名探偵なんだよ」
 紗々は恋人の顔を思い描き、笑みを浮かべた。
 紗々の愛しの名探偵、人留献也。
 人留探偵事務所を営む彼は紗々と同棲中の恋人だ。
 一人で事務所を切り盛りしているため、依頼も雑事も全て所長である人留がこなしている。
「あの」
「うん?」
 首縄は一つ咳払いをすると、わずかに目を泳がせた。
「人留さんがお忙しいのでしたら、夕食をご一緒しませんか? 先日入ったイタリアンのお店の雰囲気が良かったもので」
 普段は隙を見せない青年の赤らんだ顔を見つめ、紗々は目を細めた。
「ごめんね、今日は私が夕食を作る日だから」
「そうですか」
 首縄がガクリと落とした肩を、紗々は軽く叩く。
「もっと若い子を誘いなよ。ほら、あのカメラマンのアシスタントの子とか可愛くない?」
 機材の撤収をしている若々しい少女を視線で追う紗々に、首縄は溜め息をついた。
「夕飯は一人で済ませます」
「あ、お店の名前だけ教えてくれる?」
 追い打ちをかけられ、首縄は頭を押さえることしかできなかった。

 海の近い商店街に佇む二階建てのコンクリートビル。
 その上階の半分が人留探偵事務所、もう半分は二人が暮らす居住スペースである。
「ただいま」
 ドアを開け、紗々は夕日の差す事務所に足を踏み入れた。
「ああ、おかえり」
 窓を背にしたデスクで書類整理をしていた大柄な男、人留が顔を上げる。
 190センチを超える長身に鍛えられた筋骨隆々な体躯をワイシャツとスラックスに包んでいる彼は、茶色の髪をオールバックにしており一文字に引き結んだ口の周りに無精ひげをたくわえている。
 そんな迫力のある熊のような大男が紗々の愛しの名探偵だ。
 紗々は来客用のソファに腰を下ろすと、ローテーブルに置かれた雑誌に目を留めた。
「わ」
 間の抜けた声を上げ、口を押える。
 雑誌の表紙を自らが飾っているのだから、紗々は気恥ずかしくなってしまう。
「今月の小説夏川だ」
「見れば分かるよ。そういえば、前の写真が載るのってこれだったか」
「表紙と連載小説だな」
「うん、私は作家だよ? 表紙はついで、単なる広告」
 紗々は足を組み、背もたれに腕を回す。
「俺の前ではしない顔だな」
 人留は書類を見たままぽつりと口にする。
「表紙のこと? そりゃそうだよ、よそ行きの顔だもん」
 紗々は立ち上がり、人留に歩み寄るとその頬にキスをした。
「書類、今じゃなきゃ駄目?」
「駄目じゃない」
「じゃあさ」
 細い指が人留の厚い胸板をワイシャツ越しにゆっくりと撫でる。
「君にしか見せない顔、させてよ」
「ああ」
 人留は向かい合うように紗々を膝に乗せ、唇を合わせた。
 啄むようなキスを何度も交わすと、人留の膝を跨いでいた紗々の股間が熱くなっていく。
「ん、ちゅ……」
 紗々が小さく口を開けた瞬間、人留は分厚い舌を滑り込ませる。
「んふ……、う、ん……」
 舌を絡ませ合い、互いの唾液を味わうと、甘美な快楽が湧き上がってくる。
 いつの間にかされるがままになっていた紗々は、ただ人留の背中に手を回し、ワイシャツを掴むしかできない。
 ディープキスの勢いに任せ、人留は紗々の身体をデスクに押し倒した。
 そこでようやく唇を解放され、紗々は「ぷはっ」と酸素を吸い込む。
「はあ……、激しい……」
 とろんとした瞳で自分を見上げる紗々に、人留は告げる。
「今日は、俺の好きにするぞ」
 その宣言は紗々の子宮まで届き、全身を熱くさせた。
「うん、して?」
 人留は慈しむように節くれだった指で紗々の頬を撫でる。
「全部、俺のものにしたい」
「君のものだよ、あの日から」
「俺に見せない顔があるってのが、耐えられないんだ」
「そう言うからには、君だって私のものなんだよね?」
「当たり前だろ、骨の髄までお前に捧げる」
 普通ならば言うのも聞くのも恥ずかしくなるような言葉の数々だが、二人は日常会話のように紡ぎ合う。
 紗々のセーターを捲り上げ、黒いレースの付いたブラジャーを露わにすると、人留は零れ出しそうな豊乳に舌を這わせた。
 ふるふると震える白い肌がしっとりと舌に吸い付く。
 深い谷間に顔を埋めて甘い果実のような香りを吸い込んだ人留は、興奮気味にブラジャーのカップをずり下ろした。
 ぶるんっとボリュームのある乳房が勢いよく溢れ出す。
 柔かい双乳はダイナミックに揺れ、先端を上に向けた。
 経産婦のもののように大粒の乳頭はすっかり硬く勃ち上がっていた。
 人留は乳房を搾るように強く掴んだ。
「あっ!」
 乱暴な手付きに、紗々は声を上げる。
 指の隙間から零れる乳肉がいやらしい。
 人留は乳房の頂を擦り合わせ、両の乳首にしゃぶり付く。
 グミのような感触の乳頭を優しく噛み、舐め、再び歯を立てる。
 胸からじわじわと湧いてくる快感は子宮に蓄積していき、紗々の股間を濡らす。
 唾液でてらてらと光る乳房を放すと、人留は口元を拭い息をついた。
 そして切羽詰まった様子で紗々のジーパンと下着をまとめて脱がせる。
 濃いめの陰毛に包まれた女性器はメスの匂いを纏い、淫らな汁でぐちゃぐちゃになっていた。
 乳首同様大粒のクリトリスは、既に勃起している。
 人留は太い人差し指をぽってりとした媚肉の間に沈ませた。
 くちゅっと音を立てて指を受け入れた秘所は熱く柔かい。
 生娘のようなきつい締め付けはないが、人留を暖かく包み、優しく愛してくれる肉壺である。
 人差し指をぐるりと回して中を広げていき、頃合いを見計らって中指も挿入する。
 二本の指をぬぷぬぷと出し入れすると、紗々は身体を震わせ「ふうん……っ」と鼻にかかったような声を零した。
「びちょびちょだ」
 人留は根元まで濡れた指を引き抜き、紗々の眼前に突き付ける。
「そうだよ、だから早く……っ、人留君のおちんちんちょうだい……っ」
「ああ……」
 人留は頷くと自らのズボンのベルトを外して、勃起ペニスを取り出した。
 太く逞しい肉棒は天を仰ぎ、ビクビクと脈打っている。
 赤黒い巨根を紗々の秘部に押し当て、人留は大きく息を吸い込んだ。
「く、うっ」
 ぐっと力を込めて腰を押し付けると、デスクの上の紗々の身体が跳ね上がった。
「くひいっ♡」
 指とは比べ物にならない質量を受け止め、紗々の肉穴はみちみちと広がり肉壁はうねる。
「ふー……、絡み付いてくるな、お前のナカは……っ」
 人留は歯を食い縛り、こめかみに汗を浮かべ、腰を最奥まで進めていく。
 亀頭が肉の袋を押し潰す感覚。
「おおっ♡ し、子宮まで、きてるうっ♡」
「ああ、お前の子宮の感触を、確かめてる……っ」
「人留君のおちんちんで子宮ノックしてえっ♡」
 紗々はうっとりとした表情で、乱暴なピストンを望む。
「っ!」
 その言葉で人留のモノは更に硬度を増し、ぐりぐりと女の大事な器官を刺激する。
「んおおっ♡ おちんちん硬いいっ♡ それに熱いよおっ♡」
「お前のナカが気持ち良くて……っ、いくらでもセックスできそうだ……っ!」
 人留は紗々の腰をガッチリと掴むと、抜ける寸前までペニスを引いた。
 紗々は内臓を引きずり出されるような感覚に呻く。
 人留はそんな恋人をギラギラとした瞳で見下ろしながら、ピストン運動を開始した。
「んんっ♡」
 紗々は目を白黒させ、身体を強張らせた。
「ふうっ、ふう……っ!」
 人留は息をつきながら、貪るように紗々の膣壁を抉る。
「おっおっおっおっ♡」
 紗々の胸の双乳がリズミカルに揺れる。
 腰と尻がぶつかり合う乾いた音と膣内から響く水音、そのコントラストが情欲を煽った。
 何度も何度も子宮を押し上げられ、紗々の意識は途切れそうになる。
 涎と涙を垂らし、汗塗れになって、人としての尊厳などかなぐり捨ててしまいそうになる。
 一匹のメスになり果て、ただ愛しい男の肉棒を受け入れる穴となりたい
 そんな願望を胸に抱く。
 それは人留も同様だ。
 紗々を自分だけの密壺として、どこにも出さず、誰にも見せず、その身体を味わい尽くしたい。
 願望などという生温い言葉ではなく、人留は本能で紗々を求めていた。
「ふうう……っ、うっ!」
 張り詰めた肉棒で一際強く貫く。
 亀頭が子宮にめり込み、一拍置いて白濁液をぶちまける。
「ほひいいいいっ♡」
 無様な声を上げ、紗々は犬のように舌を突き出し白目をむいた。
 熱い粘液が子袋を責める。
 膣襞の一つ一つまで染み込む精液に身体の内を焼かれ、紗々の細胞全てがオスに屈服する。
 身体に、心に、女の本能に、人留の存在が刻み込まれる。
 人留は一滴も残すまいと精液を搾り出し、愛する女にマーキングをした。
 これは俺のものだと、何度も確認するように亀頭を擦り付けた。
 満足するまでその行為を続けると、人留はようやく紗々の膣内から萎えた肉を抜き去った。
 ごぷりと溢れ出す子種。
「あ……、出ちゃう……っ」
 紗々は名残惜しそうに膣口を閉めようとするが、巨根に広げられた肉穴はすぐには戻らない。
 ぽたりぽたりと床にしたたり落ちる精液の生臭さで、二人は少しずつ現実感を取り戻していく。
「はは……、人留君ってば、出し過ぎ」
 照れ笑いを浮かべながら、紗々は身体を快楽の余韻で小刻みに跳ねさせた。
「危険日、だったか?」
「まだだよ」
「そうか」
 人留は残念そうに返す。
「分かってて中に出したんじゃないの?」
「いや、孕ませるつもりだった」
「もお……」
 紗々は苦笑し、精液で満たされた下腹部を撫でた。

 翌日、朝食のトーストを食べ終えた紗々は立ち上がった。
「どこか行くのか?」
 人留に問われ、頬を掻く。
「あっちの仕事」
「長西さんに呼ばれたんだな」
「うん、丁度締め切りも明けたし」
「断れないのか?」
「難しいかな。まあこれも、絆家当主の運命ってやつだよ」
 紗々は眉尻を下げ、弱々しく笑った。

 紗々がやってきたのは市内にあるオフィスビルだった。
 ガラス張りの二十階建てのビルは某大企業のものである。
 紗々は受付の若い女に自分の名を告げ、「会長に取り次いでもらえますか?」と簡潔に済ます。
 受付嬢は怪訝そうな顔をすると内線で連絡を取り、紗々を通した。
 エレベーターで最上階の会長室に向かいながら、紗々は髪を指に絡ませる。
 絆紗々──推理作家、その裏の顔は絆家当主。
 人神村を治める絆家の長である。
 人神村は、既に地図から抹消されているが。
 エレベーターが止まって扉が開き、ワンフロア全てを使った会長室に足を踏み入れる。
 広々とした部屋に置かれた年代物の高級ソファとローテーブル、その向こうには重厚なデスクがあり、グレーのスーツを着た白髪の老紳士が座っている。
「やあ、紗々君」
「お久しぶりです、長西さん」
 恭しく頭を下げる紗々に微笑むと、長西学は低くよく通る声を投げかける。
「推理作家として活躍しているようだね」
「おかげさまで」
「今日は絆家当主としての仕事を頼みたい」
 絆家当主に課せられた忌まわしい因習を葬るため、紗々は長西に魂を売った。
 表向きは大企業の会長だが、裏社会を牛耳る首領と呼ばれるこの男に。
 その代償として、長西の手駒となり裏の世界に身を投じることとなったのだ。
 裏社会の厄介事を、長西の名前を出さず、あくまで個人として片付ける。それが紗々というトリックスターの役割だ。
 著者近影を載せたのも半分はそのためである。
 物好きな推理作家が個人的に裏社会に足を踏み入れた、そう思わせるのだ。
 つまり『何か』が起こっても長西の名は出せない、力を借りることもできない。
 『推理作家の絆紗々』として死ぬこととなる。
「ストレイドッグスコロシアム、というのを知っているかね?」
「野良犬の闘技場……、地下格闘場でしたか」
「ああ、そうだ。ルール無用、ファイターの生死は問わず、観客たちが勝敗に金を賭ける、そんな場所だ」
 長西は息をつくと、背もたれに背中を預けた。
「野良犬と呼ばれる挑戦者がコロシアムの主である金井の飼い犬と戦い、観客は残酷なショーを楽しみながらギャンブルに身を投じている。そこまではいい。しかし、あれは借金を抱えた一般人を野良犬にしたりと、やり過ぎた」
「だから、潰せと?」
「一般人を巻き込むのはいけない。裏社会には裏社会なりの秩序が必要だ、裏と表を分けるためのね」
「存じております」
「ストレイドッグスコロシアムを盛り上げているのは、金井の飼い犬の中でも狂犬と呼ばれる男だ」
 長西は顎を撫で、小さく笑った。
「野良犬が狂犬を倒せば混乱が生じ、金井の面子も潰れる」
 紗々は頷き、長西がデスクの引き出しから取り出した茶封筒を受け取った。
「情報はそこにある」
「ありがとうございます」
 紗々は一礼すると、エレベーターへ向かった。

 繁華街に建つファッションビルのエレベーターの階数ボタンを、資料に書かれた通りの順に押す。
 紗々だけが乗った箱は本来ならば行くはずのない地下に下りていき、止まった。
 ストレイドッグスコロシアムに到着したのだ。
 扉が開くと、熱狂的な歓声が耳を貫く。
 すり鉢状の会場の中心に作られたリング、それを取り囲むように五段の観客席が用意されている。
 百人ほどの観客たちの多くは柄の悪そうな若者だが、中にはボディガードらしき男に左右を固めさせた身なりの良い中年男性の姿も見える。
「あんた、観客? それとも……」
 白いスーツを着た男に話しかけられ、紗々は微笑んだ。
「野良犬希望、かな」
「マジかよ」
 男は口笛を吹くとリングの方へ目をやった。
「あれとやりたいのか?」
 リングの上では人留に負けず劣らず屈強な男が少女と戦っている。
 いや、嬲っていると言うべきだろう。
 元は美しかったであろう少女の顔は原型を留めぬほど腫れ上がり、際どい水着のようなコスチュームから覗く腹は青痣だらけである。
 彼女は「ギブアップ! ギブアップだから!」と声を上げているが、止めに入る者はおらず大男が後ろからその首に丸太のような腕を回した。
 足が付かぬ高さで締め上げられ、彼女の股間から黄色の液体が垂れ流される。
 白目を剥き、だらりと舌を突き出して体を痙攣させ始めた少女の体は尿溜まりに打ち捨てられた。
 大男は黙って背を向け、観客席を割って作られた階段を上り、紗々から向かって右の出入り口へ姿を消した。
「狂犬強い! 今日も鮮やかな勝利だ! さて、ここからはお楽しみの凌辱ショーです!」
 そのアナウンスと共に、プロレスラーのような男たち──体だけなら狂犬よりも大きい──が数人で気絶している少女を取り囲んだ。
「いい趣味だね」
 紗々は肩を竦め、白スーツの男を見遣る。
「あんたもああなるぜ」
「気を付けるよ」
「まあ。狂犬とやるには五人抜きしないと駄目だがな」
「了解」
「じゃあ、控え室で着替えてくれ」
「着替え? あー……」
 紗々は男たちに剥ぎ取られていく少女のリングコスチュームを見て、肩を竦めた。
「本当に、いい趣味だ」
 そんな紗々の視界の端に、白衣の女が映った。
 長身に中性的な顔立ち、黒いロングヘア―は艶やかで、細くしなやかな体をパンツスーツと白衣に包んだ美女だ。
 女はつまらなくて仕方がないという様子を隠しもせず、リングで行われる凌辱ショーを通路に立ったまま見詰めている。
 それなのに、その瞳からはっきりとした殺意が感じられた。
 憎しみや怒りからくるものではない。どこか事務的な殺意だ。
「野良犬用の控え室はあっちだ、怖気づいてねえよな?」
「いや……」
 その女を気にしつつ、紗々は白スーツの男に急かされ狂犬が消えたのとは反対の出入り口に向かった。

「うーん……」
 一時間後、綺麗に掃除されたリングに上がった紗々は自らの格好を見下ろした。
 テカテカとした黒いエナメル素材のビキニにグローブとサイハイブーツ、身に着けているものはそれだけだ。
 バストはほとんどはみ出ており、乳輪もわずかに見えてしまっている。陰毛も同様だ。
「これは、参ったな……」
「続いての野良犬は熟れた身体を持て余した美女! 巷で話題の推理作家、絆紗々だー!」
 告げた覚えもない名前を出され、紗々は苦笑する。
 目論見通り、誰もが紗々のネームバリューに注目し、背後にある長西の存在など考えもしない。
 全てが違法のこの場を、表社会で下手に拡散する者はいない。もし動画をネットに投稿でもしようものなら、関係者によって特定され、見せしめも兼ねた凄惨な死が待っている。
 それを誰もが理解して、この場にいるのだ。
「そんな野良犬はどこまで生き残れるのか! 皆さん、ベットをお願いします!」
「あんなだらしない体で勝てるかよ! 一人目でアウトだな!」
「いや、あのおっぱいをぶるんぶるんさせながら戦ってほしいね、二人抜きくらいしてくれよ」
「とにかく早く犯されてるところが見てえ! 一人目に賭けるぜ!」
 観客たちは紗々が狂犬に勝つどころか五人抜きすることさえ不可能だと予想し、賭けていく。
 リングに上がってきた飼い犬は、先程凌辱ショーに参加していた巨漢だった。
「いい乳してんなあ、作家先生」
「そりゃどうも」
「その乳、サンドバッグにしてやるぜ!」
 ゴングの音と同時に、男は紗々に向かって突進してくる。
 紗々はそれを避けようともせず、左足を踏み締め右足を上げ、腰を捻った。
 風を着る音がしたかと思うと、大きな体がリングに崩れ落ちた。
 ざわざわと、会場の空気が変わる。
 速く、力強く、華麗な回し蹴りが男の鳩尾を打ったのだ。
 飼い犬は嘔吐し、体を起こすこともできずにいる。
「の、野良犬の勝利……!」
 戸惑いながらも、アナウンサーは紗々の勝利を告げた。

「絆紗々、まさかの五人抜きだー!」
 五人目の対戦相手の顔面に膝蹴りを喰らわせ、紗々は息をついた。
「やっと狂犬かあ」
 額の汗を手の甲で拭い、紗々は狂犬の登場を待つ。
「さて、いよいよ狂犬の出番です!」
「犯せ!」
「やっちまえ!」
「頼むぜ狂犬!」
 観客たちが紗々へのヘイトを溜めているのは火を見るより明らかだった。
 狂犬がここで彼女を打ちのめさなければ、暴動でも起こり兼ねない。
「そうなれば、なおさら好都合なんだけど」
 そんな怒声に包まれながら、色黒の肌に艶のない黒髪、濁った目の男がリングに上がる。
「よろしく、狂犬」
 紗々がトントンと爪先でリングを蹴りながら声をかけても、狂犬は何も答えず「ふー……」と息を吐き出すだけだ。
 ゴングの音が、張り詰めた空気を震わせる。
 狂犬は鋭い動きで紗々との距離を詰める。
 紗々は素早く右側面に踏み込んで自らの位置を正面から外し、肘を打ち込んだ。
 硬い脇腹を肘打ちされた狂犬の動きが、わずか一秒止まる。
 その間にもう一撃を入れようとした紗々の腕は空を切った。
 狂犬は距離を取り、紗々をじっと見詰める。
「一撃喰らった! あの狂犬が、野良犬から一撃喰らいました!」
「おい、何やってんだ!」
「負けたらぶっ殺すぞ!」
 観客席から飛び交う野次の声など気に留める余裕はどちらにもない。
 紗々と狂犬は距離を取ったまま動けずにいた。
 ──確かに強い、隙を作ったら負ける……。
 相手の呼吸にさえ耳を澄まし、微動だにしない二人のファイター。
 その時、紗々の目を鋭い光が刺した。
「っ!」
 レーザーポインターか何かの光が、明らかに紗々の目を狙って照射された。
 反射的に目を閉じた紗々の体を、狂犬のタックルが襲う。
 衝撃をまともに受けた紗々は受け身を取ることもできず倒れ込む。
 体勢を立て直す間もなく、狂犬の拳が柔かい腹にめり込んだ。
「が……っ!」
 息が止まる。
 防御をする間などない。二撃目が紗々を襲った。
「はあ……、あ……っ」
 紗々の視界の端に、また白衣の女が映った。
 通路に佇む女は小さく笑っていた。
 狂犬は紗々の首を片手で掴むと、軽々と持ち上げ締め付ける。
「ぐう……」
 とにかく足をばたつかせて狂犬に蹴りを入れたが力は入らず、逃れることなど不可能だった。
 狂犬は大きな手に力を込め、紗々の気道を塞ぐ。
「あ……、くう……っ」
 紗々の意識は闇に落ちた。

 寝返りを打とうとした紗々は、体が動かないことに気付き目を開けた。
「なっ!」
 割れんばかりの歓声が、リング中央で分娩台に手足を拘束された紗々を包む。
 紗々は足を大きく開かされ、ビキニを取り去られ、乳房も股間も衆目に晒している状態だった。
「あの巨乳作家、絆紗々の恥辱ショーの始まりです!」
 アナウンサーがそう告げると、歓声は更に強いものへと変わった。
「クソ、眠ってれば良かった」
 そう。意識を失ったまま凌辱されていた方がましであった。それでは面白味がないと判断されたのだろう。
 仮面をつけた優男数人が、紗々を取り囲む。
 快楽と羞恥に塗れさせるのを目的とした男たちの手が、紗々の肉体に伸びた。
 複数の腕は触手のようにねっとりといやらしく、豊満な身体を撫でていく。
「く……、う……っ!」
 乳肉を優しく揉まれ、太ももを撫でられ、脇腹をくすぐられ、紗々はむず痒いような感覚に歯を食い縛った。
 柔かい身体はふるふると震え、爪先がピクンと跳ねる。
 周辺を撫でていた手が、つんと勃ち上がった乳首に触れた。
「あっ」
 二本の手が親指と人差し指で突起を摘まみ、くにくにと捏ね始める。
「んっ、乳首は……っ!」
 ただひたすら同じ強さで乳頭を刺激され、紗々の中で快楽の泉がこんこんと湧き出した。
「はあ……、あ……っ」
 じわりと広がっていく熱が、紗々の秘部を濡らしていく。
 太ももを撫でていた手が媚肉を掠め、紗々は腰をくねらせる。
 しかし男たちの手は核心には触れず、焦らすように内なる熱をくすぶらせていくだけだ。
 蕩けてしまいそうな甘く優しい快感に、紗々は状況を忘れ身を任せそうになる。
 なんとか踏み止まろうと、唇を引き結んだ。
 しかし、散々寸止めの愛撫で紗々を昂らせた男たちは、ハンディマッサージャーを手にする。
 彼らは仮面の下でニヤリと笑うと、マッサージ機のスイッチをオンにした。
 ヴウウウンと振動音を響かせ、三つのマッサージ機が迫る。
 ビンビンに勃起した乳首と、陰毛の間で充血しているクリトリスに、振動玉が接触した。
「ふぐうっ♡」
 電気が流れるような激しい快感。
 焦らされて敏感になっている性感を一気に刺激され、紗々は獣のような声を上げて喉を逸らした。
「おんっ♡ おおおおんっ♡」
 ぶんぶんと頭を振り、拘束された身体をビクビクと跳ねさせ、暴力的な快楽から逃れようとする。
 男たちはそれを許さずグリグリとマッサージ機を押し付けてさらなる振動を与えていく。
「おーっ♡ おーっ♡ これむりっ♡ これむりいいいっ♡」
 くすぶっていた熱が、一気に業火へと変わる。
 乳房はぷるぷると細かく震え、陰毛がちりちりと擦れ合う。
「おほおおおっ♡ イグッ♡ イグウウウウッ♡」
 ビクンッと大きく身体が跳ねた。
 炎が爆ぜ、全身をハンマーで殴られたような衝撃が紗々を襲う。
 だが、男たちは拷問を続ける。
 押し付けるだけだったマッサージ機を、ゆっくり円を描くように動かし始めたのだ。
「くひいいいいっ♡ イッたのにっ♡ イッたのにいいいいっ♡」
 乳首とクリトリスが、振動と共に捏ねられる。
 達したばかりの突起はあまりにも敏感で、この刺激は地獄の責め苦に等しい。
「おっおおおおおっ♡ おっほおおおおおっ♡」
 拘束具をギシギシと軋ませ、紗々の身体は何度も何度も跳ね上がる。
「紗々さんは乳首とクリを弄られるのが好きみたいですねー」
「アヘ顔エッロ!」
「つか体エロ過ぎだろ」
「乳首もクリもでけえな、ヤリまくってんのか?」
「犯されたくて来たんだろ!」
 興奮混じりのアナウンスが響き、嘲笑の声が飛び交う。
「イグッ♡ イギじぬううううっ♡」
 紗々の股間から、ぷしゅっぷしゅっと潮が吹き出した。
「えああ……♡ あへえ……♡」
 ようやく電マ地獄から解放された紗々は顔を涙や涎、鼻水でぐちゃぐちゃにして身体を小刻みに痙攣させる。
 痛いほど張り詰めた乳首と肉芽がピンと天を仰いでいる様子がいやらしい。
 焦点の合わない瞳は何も映しておらず、まとも思考することもできない。
 男たちは放心している紗々の拘束具を外し、雑な手付きでその身体をリングの床に投げ落とす。
「ぐべっ!」
 顔面をぶつけた紗々は、疲弊のあまり潰れた蛙のようなポーズのまま立ち上がることもできない。
「ほら、立たないと続けられないだろ」
「ぴぎゃっ!」
 男たちの中の一人が、俯せで倒れている紗々の股を蹴り飛ばす。
「おーっ! おっおっ!」
 硬い靴の爪先が割れ目に食い込んだ痛みで、紗々は丸くなってピクピクと震えた。
 他の男たちが分娩台を運び去っていく中、紗々を急かす男は業を煮やしたのか両手の人差し指を合わせた。
「立てよ」
 紗々の尻の穴に、二本の指が根元までずぷりと埋まる。
「ほげっ☆」
 尻を跳ね上げた後、紗々はばたばたと藻掻き、内股で立ち上がった。
「それでは、リベンジマッチです!」
 アナウンスと共に、紗々が最初に倒した体だけは大きな男が現れる。
 ゴングが鳴り、状況も掴めず体もまともに動かない紗々に大男が襲い掛かる。
 強烈な右フックが紗々の乳房を捉えた。
 バチインッという衝撃音と、乳肉が千切れ飛ぶような痛み。
 乳房が、ぶるんぶるんと大きく左右に揺れる。
「ひ、ぐうううううううっ!」
 胸を押さえて次の打撃から庇おうとした紗々の両手を掴んで持ち上げ、男はその身体を宙吊りにした。
「その乳をサンドバッグにしてやるって言ったよなあ?」
 男の右拳が、再び柔かい乳肉にめり込んだ。
「いいいいいいっ!」
 身悶えする紗々より力は何倍も上の男が、今度は平手で左右から何度も乳房を打った。
「があああっ! おっぱい潰れるううううっ!」
 絶え間ない往復ビンタで乳房は揺れて衝撃を逃がすこともできず、ただ痛みを蓄積し続ける。
 双球が真っ赤になった頃、満足した男は手を止めたかと思うと、紗々の足の間に自分の膝を入れ、その体躯を振り上げた。
 紗々の手を放すと同時に膝を鋭角に曲げる。
「ぐぎいいっ!」
 紗々の媚肉を、鋭い膝が抉った。
 仮面の男の蹴りなど比べ物にならない、凶器のような膝蹴り。
 全体重を股間で受け、恥骨を砕かれるような痛みが脳天へ駆け抜けた。
 支えなどない紗々の体はゆっくりと左に倒れ、側頭部からリングに崩れ落ちた。
「ふううっ! ううーっ!」
 紗々は股を押さえ、リング上を転げ回る。
 そんな無様な様子を見て、観客たちはおかしくて仕方がないといった様子で笑い声を上げた。
 大番狂わせを見せた凛々しい女の醜態に、溜飲の下がる思いなのだろう。
 男は紗々の腰を掴むとひょいと持ち上げ、片手で自らのいきり立つ肉棒を取り出すと何の躊躇いもなく秘部を貫いた。
「ひいいいいっ!」
 太い肉の塊に無理矢理膣壁を押し広げられ、紗々は悲鳴を上げた。
 男はオナホールでも使っているかのような気安さで、好き勝手に腰を振る。
 腰を突き出すと同時に足の付かない紗々の身体を引き寄せ、二重の衝撃を与える。
 紗々は目を白黒させ、金魚のように口をパクパクと開閉させた。
 自分勝手なピストンからは快楽など見出せない。
 だが男は楽しんでいるらしく、肉棒はどんどん質量を増していく。
「オラアッ!」
 肉が爆ぜ、精液が膣内を汚した。
「あ、ああ……」
 気力と体力の限界を迎え、紗々は完全に意識を失った。

 次に目を覚ますと、目に飛び込んできたのは控え室の天井だった。
 紗々は自分が手足を縛られて床に転がされていることに気付く。
「殺されるか売られるか、この感じだと売られるのかなあ」
 自分が晒した醜態の記憶を頭から追い払おうと、紗々は先のことを考える。
 殺すならば、リング上でパフォーマンスとして嬲り殺していたはずだ。
 今こうしてご五体満足でいるということは、裏風俗か悪趣味な金持ちにでも売り飛ばされるのだろう。
「いずれこうなるだろうとは思ってたけど、もっと人留君と一緒にいたかったな」
 ──やっと再会できたのに……。
 たった、一年だ。
「一年でも長かった方か」
 そう呟いた時だった。
 控え室のドアが蹴り開けられる。
「休む暇もない……って」
 こちらに歩いてくる人物に目をやり、紗々はぽかんと口を開けた。
「人留君?」
 険しい顔をした人留は何も言わずに紗々の縄を解く。
「夢かな? ねえ、人留君」
「夢じゃない」
 紗々の手足を自由にすると、人留は強い力でその身体を抱き締めた。
「遅くなって、悪かった」
「いや、私のミスだから。でも、どうして君がここに?」
「気になって尾行してきたんだ。エレベーターでここまで下りるやり方が分からなくて、遅くなった。カタギとは思えない奴が上がってきたから殴って聞き出したんだが」
 人留は紗々を抱く力を強めると、奥歯を噛み締めた。
「もっと早く、来られれば良かった」
「来てくれたんだからいいよ」
 紗々は微笑み、人留の背中に手を回す。
「ああ、人留君だあ……」
「早く帰るぞ。これ以上ここにいたら、怒りで気が狂いそうだ」
「待って」
 紗々は人留の胸を押すと、にっこりと笑った。
「気力が回復したから、もう一勝負してくる」

 狂犬にずたずたにされた女がリングに沈むと、会場が沸く。
「やはり狂犬強い! 野良犬は一撃も喰らわせることもできずにダウ……、ん?」
 アナウンスの声が止まる。
 セーターとジーパンに着替えた紗々の姿に目を留めたのだ。
 控え室に続く通路から飼い犬の男たちを蹴り飛ばし、紗々が現れる。
「わざわざ様子を見に来てくれたおかげで、早々に五人抜きは済んだよ。再戦、受けてくれるかな?」
 リングの下から不敵に狂犬を見上げる紗々。
「またあの悪趣味なショーをしたいのか?」
「今度は負けない」
 紗々がリングに飛び上がると、狂犬は倒れている女の足を掴んでリングの外へ放り投げた。
「なら、来い」
 二の句を継げずにいるアナウンサーや観客たちを置き去りにして、ゴングが鳴る。
 紗々は躊躇いなく攻めた。
 狂犬との距離を詰め、防御する暇も与えず鳩尾に膝蹴りを入れた。
「ぐっ!」
 一歩後ろに下がった狂犬を逃さず、脇腹に回し蹴りを喰らわせる。
「調子に乗るな!」
 狂犬はその右足首を掴むと、グイと持ち上げた。
 紗々の左足が床から離れ、体が宙に浮く。
 不安定なその状態からは攻撃などできない。
 しかし、紗々は持ち上げられた反動を利用して飛び上がり、狂犬の手が離れた瞬間右足を振り下ろして顔面に左膝を叩き付けた。
 狂犬の身体が後ろに倒れた。
 紗々は重力に従って踵を鳩尾に落とした。
 狂犬の呼吸が止まる。
 紗々の瞳が、狂犬を見下ろした。
 凛々しい推理作家のものでも、無様なメス豚のものでもない、絆家当主の目。
 闇や悪意、そんなものが狂犬を押し潰す。
「お、俺の負けだ……」
 圧倒されながらもなんとか声を絞り出した狂犬は、自身の敗北を告げた。
「狂犬が……、ギブアップ……?」
 戸惑いがちな疑問形のアナウンスが場内に響く。
 紗々はリングからひょいと飛び下り、観客が呆然としている間に階段を駆け上がる。
 エレベーター脇に立っていた人留が即座に開閉ボタンを押し、二人は地上へと戻る箱に乗り込んだ。

 翌日になって紗々は再び長西の元を訪れた。
「激しい暴動で、負傷者が出たそうだ」
 長西は微笑み、右手で自分の顎を撫でる。
「金井の面子は潰れましたね」
「ああ。そうだ、金井といえば」
「はい?」
「死んだよ」
「は?」
 紗々は眉を上げた。
「暴動で、ですか?」
「いや、暴徒が入り込むことのなかった飼い犬用の控え室で刺し殺されていたらしい」
 紗々は「はあ」と気の抜けた声を出したあと、眉間に皺を寄せた。
「長西さん、白衣の女に心当たりはありませんか?」

 市内にある総合病院に勤める外科医、藍澤時雨は息をついた。
「今日は次の患者で終わりですね」
 カルテを手に取った時雨は顔を顰め、隣にいる看護師に「少し出ていてください」と告げた。
 彼女は怪訝そうな顔をしたが、資料室に取りに行ってほしい書類があると続けると納得した様子で診察室を後にする。
 入れ替わりに入ってきた患者を見て、時雨は眉間を指で押さえた。
「どーも、藍澤先生」
 紗々は丸椅子に腰掛け、時雨に微笑みかけた。
「生きてらっしゃったんですね」
「酷い言い草だな。真剣勝負に水を差すなんて無粋な真似をしておいて」
 ストレイドッグスコロシアムで紗々の妨害をした白衣の女。
「医者が本業なの? それとも殺し屋の方?」
「こちらが本業ですよ。貴女こそ、推理作家のはずでは?」
「次回作のための取材に命を賭ける推理作家だよ」
「ただの推理作家が、私に辿り着けるとでも?」
「現に、ここにいる」
 紗々は肩を竦めた。
「まさか囮に使われるとはね。観客や飼い犬たちがリングに集中している間に金井を殺したわけだ」
 二人の視線が交錯する。
「言いたいことはそれだけですか?」
「言いたいことはね」
 紗々は時雨の右手首を掴んだ。
「お礼はするよ」
 ぐいっと引き寄せ、首筋にキスをする。
 時雨はその手を振り払い、立ち上がった。
 そのまま数歩後ろに下がるが、背中に壁の感触を感じて立ち止まる。
 紗々は時雨を追い詰めるように片手を壁に付いた。
「大丈夫、優しくする」
「悪趣味な……」
 嫌悪の表情を浮かべる時雨を見て、紗々は口角を上げた。
「抵抗してもいいよ。物音を立てたら誰か来るかもしれないけど」
「貴女は……っ!」
 紗々の指が時雨の首筋をなぞり、ネクタイを外す。
「縛られる方が好み?」
 そのネクタイを眼前に突き付けると、時雨は首を横に振った。
「そう、残念」
 細く長い指が優しくワイシャツのボタンを外していく。
 薄い胸にはブラジャーなど不要ということなのか、それだけで露わになってしまった素肌は白く傷一つない。
「可愛い」
「殺しますよ?」
「いや、胸の話じゃなくて」
 時雨は視線で紗々を射殺さんとばかりに睨み付ける。
 紗々はそれを気にせず、色の薄い乳輪の縁を撫でた。
「く……っ」
 時雨は右手で口を塞ぎ、左手で白衣を握り締める。
「そんなに人に見られたくないんだ?」
 紗々が人差し指の腹で小粒の突起を撫でると、時雨は小刻みに身体を震わせた。
「乳首、弱いんだね」
 両方の乳頭を摘まみ、くにくにと弄ぶ。
「ふう……っ! んう……」
 指の隙間から甘い声が漏れ出る。
 爪で軽く引っ掻くと、時雨は喉を逸らした。
「ふうー……っ!」
 軽く達したらしく、時雨は荒い息を押さえようと白衣を握る手に力を込めた。
 その鋭い瞳は涙で潤み、長い睫毛が震えている。
 紗々はその表情を見て満足し、何事もなかったかのように踵を返した。
「今日はここまで。また会いに来るよ、藍澤先生」
 冗談か本気か分からぬ口調。
 紗々が診察室を出ていくと、時雨は壁に背中を預けたままずるずると座り込んだ。

 人留探偵事務所に帰ってきた紗々は鼻歌など歌いながらソファに体を沈めた。
 デスクで書類整理をしていた人留は、そんな恋人の横顔を見詰める。
「どうしたの、人留君?」
「いや、お前に初めて会った時のことを思い出してた」
「あの時のこと?」
「変わったな、お前は」
「君は変わってない」
 人留は人神村で出会った女の姿を脳裏に描いた。
 派手な赤い着物を着流し風に纏い、諦めたような笑みを浮かべる女だった。
「君と出会って、私の世界は始まったんだよ」
 世界がモノクロだとしてもカラフルに映るであろう笑顔を見て、人留は頷く。
「俺も、同じだ」
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  1. 2020/04/06(月) 18:41:25|
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