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18禁小説『万引き少年の悲劇』

 18禁ミステリーです。紗々の担当編集者である首縄は、ある日万引き少年の生徒手帳を拾うが…。
 エロは人留と紗々でイチャイチャセックスです。
 最近マニアックなエロが少ないので、次はエロオンリーでがっつり変態ちっくなのを書きたいです。


『万引き少年の悲劇』

「そうだ、のど飴でも買っていきますか」
 出版社に勤める青年、首縄尋夫は原稿を取りに行く途中コンビニに立ち寄った。
 昨夜上司に付き合わされたカラオケのせいで、少々喉を痛めていたのだ。
 黒い髪をオールバックにした彼は、穏やかな笑みを湛えてのど飴を選ぶ。
「これにしましょう」
 適当なものを手に取りレジへ持っていこうとしたとき、不審な者が目に入った。
 ――やれやれ……。
 ポケット菓子の棚の前で、学生鞄にチョコレートを滑り込ませる中学生と思しき少年。
「いけませんよ」
 周りの客には気付かれないよう声を抑えたが、少年は首縄を睨み付ける。
「店員じゃないのか、なんだ」
 その言葉を聞いた瞬間、首縄の目の前には鞄があった。
「つっ!」
 重い鞄の一撃を顔面に喰らい、首縄は一歩下がる。
 その隙に少年はコンビニを駆け出していった。
「まったく……。おや?」
 首縄は眼鏡を直すと、床に落ちている生徒手帳を拾い上げた。

「何もかも忘れるほど、滅茶苦茶にしてほしい」
 人留の事務所のソファで、紗々はぽつりと呟いた。
「いきなりどうした」
 人留はデスクから離れると紗々を見下ろす。
「忘れたいことなんて誰にでもあるでしょー。とにかくセックスしよ、セックス」
 その手が人留の頬を挟み、長く深いキスをした。
「忘れたって、逃げられるわけじゃないんだろ」
「一時でも忘れたいと思うのが、人間の愚かさってやつだよ」
 人留はため息をついた。
 ――どうせ、断れないんだ。
「ね、だから早く」
「せめて鍵を閉めて……」
「誰か来るかもって思ったら、ドキドキするじゃん」
「お前は……」
 紗々は人留の腕を放そうとはせず、振り払う気もない彼はもう一度溜め息をつき、その体を押し倒した。
「ふふ、人留君、好きい」
「俺もだ」
 今度は人留の方から口付け、口内を犯していく。
「んちゅ、ふうん……」
 紗々は人留の広い背中に手を回し、積極的に舌を絡めた。
「ぷは……」
 貪り合うような口付けを名残惜しげに終わらせると、人留はネクタイを解き、ワイシャツを脱いだ。
 その筋肉質な体躯を、紗々はうっとりと見つめる。
「はー、やっぱりいい体してるよね。筋肉付いてる男の人ってかっこいい」
「そうか……。ほら、お前も脱げ」
 人留は顔を赤くしながら、紗々のセーターを脱がせ、黒いブラジャーのホックを外した。
 ぶるんっとやや垂れ気味の巨乳が揺れた。
「キスだけで興奮したのか。乳首が勃ってる」
 大きめの突起は人留の言う通り勃起していたが、興奮しているのは彼も同様で股間はすっかりテントを張っている。
「たまにはさあ、お互い裸になるのも良くない?」
 紗々はそう言いながらジーパンとパンティを一緒に脱ぎ去り、黒い茂みの奥にある秘唇を見せ付けた。
「ああ、分かった……」
 人留とズボンとボクサーパンツを下ろし、すっかり上を向いた巨根を晒す。
 お互いの性器を見合っていると、二人はどこか気恥ずかしくなった。
「人留君のちんぽ、ほんと大きいよね」
「お前のはなんというか、凄くやらしいな」
「き、君がハメまくった結果でしょうが。――というか、何で君は三十超えてそんなすぐフル勃起できるのさ? まだ、触ってもいないのに」
 そう言われても、と人留は頭を掻く。
「お前の裸とか見てたら、その、な……?」
「性欲に関しては中高生レベルだよね」
「そっちだって、グチョグチョじゃないか」
 人留はそう言いながら紗々の秘部に指を挿れ、ぐちゅぐちゅと音を立てて掻き混ぜる。
「ああっ! んっ、仕方ないじゃない、そんなの、見せられたらっ!」
 とろんとした瞳で、紗々は人留のイチモツを見つめた。
「俺だって、もう……」
 人留は肉付きの良い腰をガッチリとホールドし、怒張した自身を割れ目に押し当てた。
「は、早く、挿れてよ……っ!」
「わ、分かってるっ、くそ、滑って……っ!」
 焦る余りペニスは濡れた割れ目の上を滑り、その結果焦らすようになってしまう。
「もお、こんな……、ゾクゾクする……っ」
 紗々は身震いをし、絶頂一歩手前のもどかしい快感を噛み締めた。
「くっ、入った!」
「んほおっ!」
 それは勢いよく肉壺に侵入し、子宮口を突いた。
「い、いきにゃり、子宮まれ、くるなんへえ……」
 その一突きで達したらしく、紗々はビクリと身体を跳ねさせ呂律も回らぬまま言葉を紡ぐ。
「人留君のちんぽお、凶悪しゅぎい……っ! こ、こんな、しゅごいのお……」
「キマってるところ悪いが、動くぞ」
「ひいっ!」
 人留の方はまだ余裕があるようで、逃げそうになる紗々の腰をしっかりと捕えて膣口ギリギリまで腰を引く。
 ズンッと力を込めて突くと、紗々は悲鳴を上げて背中を反らした。
「あひっ! はげしい……っ!」
「滅茶苦茶にしてほしいって言ったのは、そっちだ……っ!」
「でもっ! こんなの、イキっぱなしでっ! 頭おかしくなるうっ!」
 紗々は身体をガクガクと痙攣させながら限界を訴えた。
 だが、煽ったのは彼女の方なのだ。
「ここでやめられるほど俺は……っ、できた人間じゃないっ!」
 人留は一際強く突き、子宮まで侵入するとようやく射精した。
「あ、ああー……っ!」
 子種を大量に注ぎ込まれ、紗々の身体は硬直する。
 最後の一滴まで漏らさぬよう、人留は腰を押し付けたままふうと息をついた。
「終わりましたか?」
 ドアの開く音とその問いに、人留は驚いて振り返る。
「やはりここでしたね。外で待っていたのですが、もういいでしょう?」
 にっこりと微笑み、首縄は眼鏡を直した。
「先生、現実逃避は終わりですよ。原稿をいただけますか?」
 笑顔でありながら、その言葉には威圧感があった。
「現実逃避してる時点でまだ出来てないって、分かるでしょ」
 紗々は溜め息をつきながら服を着込む。
 余韻も何もないこの展開に、人留はもう慣れてしまっていた。
「やっぱりそういうことか。紗々も悪いが、首縄はせめてノックぐらいしてくれ」
「失礼、こういうのもお好みかと思いまして」
「まったく……」
 人留は頭を抱え、とにかく自分も服を着ることにした。
「首縄君、こういうときはピロートークが終わるまで待つものだよ。覚えておきな」
「その時間を執筆に回されては?」
「手厳しいね」
 軽口を叩きながら、紗々はカバンからノートパソコンを取り出しローテーブルに置いた。
「あと少しなんだよ、最後の台詞が決まらない」
 パチパチとキーボードを打ち、彼女は頭を仕事モードに切り替える。
「なるほど、重要なところですね」
 首縄がディスプレイを覗き込むので、人留は邪魔にならないようデスクに戻った。
「この流れなら、こういうのはどうです?」
「いいんだけど、前に書いた話と被るんだよね」
 紗々はいつもふざけているように見えるが、仕事に集中し始めると嘘のように真剣になる。
 ――さっきまでとは別人だな。
 人留は自分も書類を片付けることにした。

 三十分ほどが経ち、小説が完成した紗々はUSBメモリを首縄に渡す。
「じゃあ、よろしく」
「はい、ありがとうございます」
 それを鞄に仕舞った首縄は「そうだ」と、一冊の手帳を取り出した。
「何それ?」
「生徒手帳です。万引き少年の」
「万引き?」
 人留は首を傾げそちらを見た。
「コンビニで、こんなことがあったのですが……」
 首縄の話を聞くと、紗々は小さく笑った。
「それがあるなら、学校なり警察なりに連絡したらいいんじゃないの? 深入りするようなことじゃないさ」
「そうなんですが……」
「何か問題でも?」
「彼の中学が私の母校なもので、少し」
「可愛い後輩を放っておけないわけか。案外お人好しだね、君」
「そういうわけではありませんよ」
「ま、いいけど」
 紗々はポケットからスマートフォンを取り出した。
「それに電話番号書いてあるでしょ、貸して?」
「先生?」
「私に話したってのは、そういうことだよね」
 紗々の指が液晶画面の数字をタッチする。
 人留はやれやれと肩を竦めた。
「お前だってお人好しじゃないか」

 夕方の公園に、万引き少年こと塩菜優紀を呼び出した紗々。
 首縄はその隣で息をついた。
「人留さんはいいんですか?」
「あんな大柄なのがいたら、びっくりしちゃうでしょ」
 紗々はクスクスと笑い、公園に入ってきたブレザー姿の少年に目を留めた。
「彼かな?」
「はい」
 塩菜は首縄に気付くと、眉間に皺を寄せて足早にこちらへ向かってくる。
「何の用?」
 生意気そうな瞳が、二人を睨み付ける。
「落とし物を拾ったので」
 首縄は鞄から生徒手帳を取り出し、彼に見せた。
「あ」
 塩菜はブレザーのポケットを確認すると、それに手を伸ばす。
「返せよ!」
「君はいつもあんなことをしているんですか?」
 中学生の身長では首縄が高く上げた手には届かず、取り返すことは叶わない。
 それを思い知った彼は溜め息をつき、不貞腐れたように答える。
「してるよ、イライラしたときはいつも」
「そうですか」
「万引きぐらい別にいいじゃん。誰でもやってるし」
 その言葉に首縄は肩を竦めた。
「お返しします」
 そして、生徒手帳を塩菜の胸ポケットに入れる。
「え?」
「何か不満でも?」
「いや、学校とか親とか、連絡しないんだ」
「それでは、意味がありませんから」
 塩菜はそう言うと、踵を返した。
「塾、間に合いそうだ」
 腕時計を見て呟き、彼は去っていった。
 首縄は紗々の方を向いた。
「私は、間違っていたでしょうか?」
「いいや、間違ってない。ああいうタイプはそのうち痛い目を見るくらいで丁度いいよ。世の中はそんなに甘くないんだから」
「はい?」
「罪には、罰が付き物だ」

 翌日、塩菜はいつもとは違うスーパーに立ち寄った。
 ――ここでは初めてだけど、品揃えいいし。
 そんなことを考えながら、ポケット菓子の棚を物色する。
 幸い今は子供客もいない。店員も、視界には入ってこない。
 チョコレートに手を伸ばし、それをさりげなく鞄に入れて……。
「ちょっと君」
 がしっと腕を掴まれた。
 黒いエプロンを付けた店員は大柄で、とてもその手を振り解けそうにはない。
 塩菜は、すっと血の気が引いていくのを感じた。

 通された控え室で店長だという小太りの男を前にし、彼はただ黙り込んでいた。
 店員は去っていき、この部屋には店長と二人。助けを求められる相手はいない。
「万引きが犯罪だってことは、分かってるね」
 店長は塩菜の生徒手帳を確認しながら問いかける。
 だが、彼は答えない。答えることができなかった。
「うちでは万引きは警察に通報することにしているんだ」
「け、警察?」
 ――嘘だ、たかが万引きじゃないか……。何で……。
 店長は机の上の電話に手を伸ばす。
「待って!」
 塩菜は無意識に店長を突き飛ばしていた。
 彼は決して力が強い方ではない。火事場の馬鹿力というやつだったのだろう。
 悪意や殺意などというものは、決してなかったのだ。

「殺人、か」
「ああ、万引きしたガキが警察に電話されそうになって被害者を突き飛ばしたんだってよ」
 本郷はそう答えたあと、紗々と人留を睨み付けた。
「何でお前らが現場にいるんだよ!」
 遺体が運び出された殺人現場で、人留と紗々は顔を見合わせる。
「何でって……」
「人留君がうち来るって言うから一緒に夕飯の買い物してたら、君らが来たもんでね」
 紗々はスーパーの買い物袋を軽く揺らした。
「あ、今夜はカレーですね! わたしもそのルーよく使うんですよー。おいしいですよね!」
 いつも通り能天気な水乃。
「お前は呑気なこと言ってんじゃねえよ。殺人現場だぞ、ここは!」
 本郷に頭を軽く叩かれ、「痛いですー、先輩」と涙目になっている。
「まあ偶然にもそのガキ――塩菜君と昨日会ってるんだよ。だから放っておけなくてさ」
 紗々の言葉に、水乃はパンと手を叩く。
「そうなんですか! さすが名探偵です。犯人の方が引き寄せられちゃうんですねー」
 ――何でこの子は刑事になれたんだ?
 人留は毎度抱く疑問を頭から追い出し、顎を撫でた。
「しかし、何にせよ塩菜自身認めてるんだろ? 紗々の出る幕はないんじゃないか?」
「念には念をってやつかな。とりあえず情報」
 本郷は溜め息をつき、頭を掻きむしった。
「ったく! とりあえず被害者を突き飛ばした塩菜はそのまま逃げ出した。だがすぐに生徒手帳を置いてきたことに気付いて控え室に戻り、机の上の生徒手帳を手に取った。そこで床に倒れている被害者の頭から血が流れていることに気付き、呆然と立ち尽くしていたところを入ってきた店員に確保された。――おかしいところはない」
「その店員が、通報者兼第一発見者ってことか」
 人留も、その話を聞くとなんの疑いも持てなかった。
「ああ、ちなみに万引きしたところを捕まえたのもその店員だ。それで控え室のドアが見える位置で商品の整理をしてたらしいが、塩菜の供述通り、一度出てきてすぐ戻ってきた。その間に出入りした人間もいなかった」
「なるほど」
「指紋にも不自然なところはなかったな。椅子や机からは被害者、塩菜、従業員たちのものが、生徒手帳からは塩菜の指紋。ま、過失致死だな」
「へえ……」
 紗々が微かに眉を上げる。
「もういいか?」
「待って」
「あ?」
「おかしいんだよ」
 紗々は人差し指を立てた。
「生徒手帳に付いてた指紋が塩菜君のものだけ? それには昨日、私と首縄君も触ってる。それに被害者の指紋だって付いてなきゃおかしい」
 ガチャリとドアが開く。入ってきたのは第一発見者の店員だ。
「ひょっとして貴方、手帳に付いた自分の指紋、拭き取りました?」
 喰えない笑みを浮かべた紗々は、店員を見つめる。
「な、何のことですか?」
 彼は視線を泳がせた。
「塩菜君が出て行った時点で、被害者はまだ生きてたんじゃないですか? 彼が駆け出していったのを不審に思った貴方はここに入った。そして倒れている被害者を見て、今なら全て塩菜君のせいにできると思った」
 部屋の空気が緊張感でピリピリとしているように感じた。
「まあ、手帳の指紋を拭ったのは条件反射みたいなもんでしょうね。そのせいで私たちの指紋まで消してしまった」
「ま、待ってください! 俺とは限らないじゃないですか! 誰か他の人間がやった可能性も……」
「貴方以外の誰か?」
 紗々は彼に向かって一歩踏み出した。
「誰も出入りしなかったと証言したのは貴方自身でしょう?」
 獲物を追い詰めるように、二歩、三歩と距離を詰めていく。
「そ、それは……、ああ、トイレに、行っていて、少し離れていたんだったかな……」
「なるほど。でも残念ながら」
 紗々が店員のエプロンを引くと結びが弱かったのか、それはするりと簡単に外れた。
「それは!」
 本郷が叫ぶ。
 白いTシャツに付いた、赤黒い染み。
「エプロンが黒いから気付かなかったんでしょうが、被害者の血ですよね、それ」
 店員は膝から崩れ落ち、「クソ!」と怒鳴った。
「あいつ、いつも俺のこと罵倒して、馬鹿にして! 絶対殺してやるって、思ってたんだ! 俺を馬鹿にするやつは、許さない!」
「なるほど」
 紗々は冷たい視線を彼に注いだ。
「貴方には踏み止まらせてくれるような人間はいないでしょうね。大切なのは自分自身だけのようですから」

 調書などを取るため署に連れてこられた紗々と人留は、連行されていた塩菜が出てくるのを廊下で待っていた。
 目の前のドアが開く。
 こちらを見た塩菜は青ざめ、唇を固く結んでいる。
 その口が、小さく開いた。
「犯人言い当ててくれて、ありがと。万引きも、もうしないよ」
 そして彼は、二人に背を向けた。
「優紀」
 廊下を歩いてくる中年の男に名前を呼ばれ、その背中がビクリと跳ねる。
「父さん……」
 スーツ姿の彼は、溜め息をついた。
「まったくお前は……、どれだけ人様に迷惑をかければ気が済むんだ」
「……」
 塩菜は俯いて黙り込み、父親はその姿から目を逸らす。
 どちらも、視線を交わそうとはしない。
「帰るぞ」
 重い口調でそう言い、歩き出す父親。
「待ってください!」
 息を切らしながら駆け付けたのは、首縄だった。
 彼は二人の前で額の汗を拭った。
「首縄、何でここに」
「さっき連絡しといた」
 紗々は人留にスマートフォンを見せ、笑う。
「お父さん、彼の気持ちをちゃんと聞いてあげてください」
 その言葉に、塩菜は首縄をキッと睨み付けた。
「俺の気持ちって、あんた何も知らねえじゃん!」
「少しは、分かるつもりです」
 首縄は今、笑みを浮かべてはいない。
「私は中学生のころ、いじめにあっていました。その一環で万引きをさせられたことがあります。誰にもそのことは言えなくて、どうしようもなくつらかった。君は、あのときの私と同じ目をしていたんです……」
 誰にも助けを求められないまま苦しみ、もがいている、そんな目だったと首縄は思う。
「だから、放っておけなかった」
「何で……」
 塩菜の声が、震えた。
「何で、分かるんだよ、そんなこと」
 その瞳から、涙が零れる。
「毎日塾行って勉強しても成績は上がらないし、受験とかすごく悩んでても、母さんが死んでから父さんは仕事ばっかりで、家に帰ってくるの遅いし、家に誰もいないと、たまらなく怖くなって……」
 彼は両手で顔を覆った。
「気付いたら、万引きしてた。悪いことだって、本当は分かってたけど、止められなくて……」
「優紀……」
 父親の瞳に動揺の色が浮かぶ。
「失礼ですが」
 紗々は軽く頭を掻きながら立ち上がった。
「そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないでしょうか。ただ心配したって頭を撫でてあげるだけでも、想いは伝わりますよ」
 そして、にっこりと微笑む。
「互いに互いを大切に想ってるなら、ほんの少し気持ちを伝えるだけで、うまくいくはずです」
「優紀……」
 父親はぎこちない手付きで塩菜の頭を撫でた。
「今夜、色々話を聞かせてくれ。その、学校のことでも、何でもいいから……」
「うん」
「夕飯は、私が作ろう」
「父さん、作れんのかよ」
 やっと塩菜の顔に、笑みが戻った。
 そんな親子を見送ると、紗々は首縄の肩を軽く叩く。
「おつかれさま。君も案外熱い人間なんだねえ」
「私だって、人並みに心を動かされたりしますよ」
「それに、人の心を動かした。――しっかし、息がいじめられてたとは。正直そっちの方が驚きだよ」
「昔の話ですよ。いじめっ子もすぐに転校しましたし」
「いじめっ子の方が、転校……」
 ――こいつは紗々の次ぐらいに、敵に回したくないな。
 人留は苦笑し、スーパーの袋を手にして立ち上がった。
「無事片付いたんだ。カレー作るか」
 そして紗々の手を取り、歩き出した。
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  1. 2016/09/13(火) 14:36:28|
  2. 没小説
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